INTERVIEW

interview

「いいバンドになることがエレキングの目標であって、
自己満足的なことに時間や労力を費やす意味はないと思ってる」
オダカノリユキ

エレキングの初めてのアルバム『MEET THE ELEKING』、完成おめでとうございます! ようやくだね、ここまで長かったね。

オダカノリユキ(以下、ノリ) 2012年の11月くらいから録り始めて、年末にはある程度オケができたんだけど、年が明けたら、マル(※当時のギタリスト)が「バンドを続けられなくなるかも」って。結局、2013年8月31日のライブを最後にマルが脱退して、その後、またイチから録り直すことになって。
シゲキング(以下、シゲ) で、また、オケはほぼ録れたんだけど…。

そこに、フルフル(※CRACK BANQUET、ハナ・ビーンズなどのベース担当、フルヤシュンスケ氏。レコーディングスタジオのオーナーでもある)が現れたんだよね?

ノリ そう。2013年の年末に対バンしたときに、「うちのスタジオで録れば?」って言ってくれて。じゃあ、ってことになって、2014年に入ってから、またイチから録り直し。

三度目の正直だね(笑)。

ノリ 時間をかけてじっくりやるというよりは、単純に手間をかけてしまったよね。それなのに、萬里さん(※シンガーソングライターで、ザ・クレーター、COINNのギタリストでもある白岩萬里氏。エレキングの今回のアルバムのプロデュースを担当)は最後まで付き合ってくれて、本当に嬉しかった。「もうやだ」って言われてもおかしくない状況はいっぱいあったのに……。

まぁでも、3回目の録音に突入してからは、順調に進んで。

ノリ そこからは早かったかな。いわゆるハプニングやアクシデントはなかったからね。夏の終わりにはマスタリングも完了してた。

夏の終わりから考えると、12月5日リリースってちょっと間が空いているような?

ノリ それは、流通を通す(=全国のCDショップで取り扱ってもらうようにする)かどうか迷ったから。メンバーで話し合った結果、今回は通さないことになったんだけど。

それはなぜ?

ノリ ニーズがあるならもちろん流通したほうがいいと思うけど、うちらは地方での知名度はまだゼロに等しいから、あまり意味がないんじゃないかなって。それに、「新譜がタワレコに並びました、イエーイ」って記念写真撮ってもしょうがないじゃない? そんなのただの自己満足だから。
シゲ 自分たちの目標はいいバンドになることであって、だとしたら、流通を通すために手間をかけるのは逆にマイナスかなって。

そこに自分たちの時間や労力を取られるくらいなら、ライブの一本もやったほうがいいだろう、と。特にエレキングは、活動の中でもライブの比重が大きいよね?

ノリ そもそも、ロックンロールバンドってライブをやるものだからね。曲を作って、ライブをやって、CDを作って、っていうのを、何の理由もなくやっていくもの。基本的な活動ってその繰り返しなんだよね。
吉田エースケ(以下、エースケ) たとえば、自分がバンドをやりたいと思っていたとして、誰かに「一緒にやらない?」って誘われて、「でも、ライブはやらないバンドなんだけど、いい?」って聞かれたら、絶対に断るよね(笑)。
ノリ 極端な言い方をすれば、ライブがあるから曲を作るし、CDも作る。どれがいちばん重要とは言わないけど、ライブはバンドの原点だと思う。新曲を発表するとか、CDを売るっていう目的があってライブをするのではなくて、単純にライブじゃなくてスタジオでもいいんだけど、「メンバーがいて、音を鳴らす」っていうのが、バンドをやるうえでいちばん基本的なこと。
シゲ 音楽をひたすら作っていればいいってわけじゃなくて、グルーヴをみんなで感じたい、分かち合いたいって気持ちが強い。だから、そういう意味では僕らはバンドマンだと思うし、エレキングはライブバンドだよね。

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「3人になってからは、何かに呼ばれてる感じがある。
方向性がおのずと見えているから、それに素直に従っていけばいい」
吉田エースケ

エレキングはメンバーが4人から3人になって、雰囲気が変わったよね。ライブも4人の時代はピュアさだとか、いい意味での青春っぽさが際立っていたと思うんだけど、今はもっと大人っていうか、憧れられるような存在にシフトしていっている。それは、どういうふうに舵を切っていったの?

ノリ そこは実は、特に意識してやっているわけではないんだよね。バンドのイメージやコンセプトについては、むしろ4人のときのほうが考えてた。何度も話し合って、でも、しっくりこないな~、って感じだったんだけど、3人になったらそういう話はまったくしなくなったね。わざわざ話し合わなくても、ある程度勝手にどんどん決まっていくようになって。新しい曲をスタジオで合わせるときも、僕が曲を持っていって、3人でパッと合わせて、5分とか10分でできちゃう。まぁそれは、単純に人数が減った分、やれることが限られてくるから、おのずと決まっていくってことなんだろうけど。
エースケ 3人になって最初に作った曲があるじゃん? 「Nowhere Boy, Nowhere Girl」。あの曲は自分のベースラインにしても、全体的な雰囲気にしても、無意識にこうしようって考えてるのかもしれないけど、「よし、考えよう!」っていうよりは、勝手に流れ出てくる感じだったね。
ノリ 曲が完成するスピードも速くなったし、アレンジもどんどん変わっていくようになった。カッコいい曲をやることが目的だから、そこは変わっていって全然いいと思っていて。

ライブとレコーディングもまた別物だしね。

ノリ 録音してリリースしたからって、ライブでそれをそのまま再現する必要はないからね。歌詞だって、なんか違うなって思ったら変えたっていいと思う。実際、変わってるしね。2年前にシングルで出したときの「ボーイフレンド」(=「I Wanna Be Your Boyfriend」)と今回のアルバムの「ボーイフレンド」とでは歌詞が違うから。
シゲ 面白いよね、おじいさんになってもまだ「ここの歌詞を変えようかな~」なんてやってたりして(笑)。
ノリ 「60過ぎてやっと歌詞が見えたわ~」ってね(笑)。「いろんな恋をして、やっと見えたー!」って(笑)。まぁ、自分の曲だからね、別にそのときに歌いたいことを歌っていればいいんじゃないの?って。初めに作ったものが絶対ではないから、歌詞だって変わってもいいでしょ、っていう。
エースケ 3人になってからは、なんていうか、何かに呼ばれてる感じがあるんだよね。それは曲を作るときもそうだし、エレキングで何をするにしても、この方向だなっていうのが明らかに見えてるから、より素直になるっていうか、素直に従っていく感じ。
ノリ 無理がまったくないんだよね。

それは、たとえばステージ衣装に関してもそう? 自然に今の形になっていった感じ?

ノリ なんでジャケット着てるのかって聞かれても、何の理由も、何の狙いもないんだよね。ただ、そのほうがピンと来るからっていう感覚的なものであって。
シゲ 4人のときは革ジャンで揃えてたけど、3人になったら誰からともなく「革ジャンは違うよね」「ジャケットかな」って話になって。「じゃ、ちょっとこだわって並木で作るか」みたいな(笑)。(※並木=「洋服の並木」。モッズスーツで有名なテーラー)

シゲちゃん御用達の並木ね(笑)。

ノリ でも、並木以外の選択肢ないよね?(笑)

3人に同じ血が流れてるからなんだろうね。スーツといえば並木でしょ、っていう。

シゲ ライダースはショットで、靴はマーチンで、ギターはリッケンバッカーで、とかね。実践するかどうかは別として、そういうスタイルへの夢や憧れをずっと持ち続けていて、そこが共通してるんだと思うんだよね。

3人が見ている夢が一緒なんだ。それが重なって、エレキングが描く夢になるんだね。だから、そこにはすり合わせは必要ないと。

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「あの曲の頭のカウントの『ワン、ツー、スリー、フォー!』が
ロックンロールのすべてだって言われて、この人とやるしかないと思った」
オダカノリユキ

そもそも、エレキングは結成してどのくらい経つんだっけ?

ノリ 結成は2009年だから、5年かな。

その頃の気持ちと、今の気持ちを比べるとどう?

ノリ 変わらない。
シゲ 俺は全然違う。今のほうが全然本気。バンドが成長していくにつれて、本気度がどんどん上がっていく感じ。
ノリ そういう部分での変化はあるかもね。でも、バンドは楽しいなぁっていうのは変わらない。
エースケ 俺も変わんないかな。ベースの弾き方とかはちょいちょい変わるけど、気持ちは変わんない。ただ、あれだよね、今もワクワクはずっとあるんだけど、結成した当初はもう、鼻血が出そうなくらいワクワクしてたよね?(笑) ほんと、リハに入っても同じ曲をバカみたいに何回もやったりしてた(笑)。

それって、今回のアルバムにも入ってる曲?

ノリ 入ってるよ。「China Girl」とか「ボーイフレンド」(=「I Wanna Be Your Boyfriend」)とか。

結成当初から、エレキングの歴史とともに歩んできた名曲ってわけだね。3人はどんなふうに出会ったの?

ノリ 僕は最初、エーちゃんが前にやってたバンドのお客さんだったの。僕が昔、初めてバンドを組んだ中学時代の友達が、その頃やってたバンドに、英ちゃんとマルがいたの。で、2人と友達になって、そのバンドとは別に、一緒にバンドやろうよって話はしていて。そしたら、彼らのバンドが終わることになって、じゃあいよいよやるかって。そこに、おじいさんが現れて(笑)。

おじいさん(笑)。もとい、シゲちゃんはどこから現れたの?

シゲ 僕はメンボ(=メンバー募集)なんだよね。インターネットのメンボで検索して、最初に出てきたやつに連絡した(笑)。というのも、僕は20代の頃にさんざんバンドをやってたのを一回辞めて、でも、またやりたいなって思ってメンバーを探そうとしてたんだけど、バンドを深く掘り下げるつもりはなくて、「ビートルズのコピバンでもいいや」程度だったの。それで、検索してパッと出てきたバンドのコメントを観たら、好きなバンドの中にビートルズがあったから、ここでいいかなって。
ノリ うちらは、ドラムが見つからないからメンボしようよってことになって、エーちゃんが「募集出しとくわ」って。そしたら翌日「もう来た」って(笑)。で、会うことになったんだよね、所沢のモスバーガーで。そしたらシゲさんが現れて、ビートルズの「I saw her standing there」の頭のカウントの「ワン、ツー、スリー、フォー!」がすべてだ!って言うんだよ。それを聞いたときに、「どえらいやつが来たぞ、これはもうこの人とやらなきゃダメだ」って思った(笑)。
シゲ ビートルズの1stアルバムをかけると出だしが「ワン、ツー、スリー、フォー!」で始まるんだけど、あれがロックンロールのすべてを語ってるなって俺は思ってて。しかも、フォーだけ上がるんだよね。フォー!って。
ノリ でもあれでしょ、アメリカ盤だと「ワン、ツー、スリー、フォー!」じゃなくて、頭が切れてて「フォー!」しか入ってないんでしょ?(笑)

なんじゃそりゃ(笑)。

シゲ ほんとあれひどいんだよ、ビックリするよ。「ワン、ツー、スリー」がカットされてて、いきなり「フォー!」って。
ノリ 完全にただの奇声だよね(笑)。

エーちゃんはシゲちゃんの第一印象は?

エースケ 最初、もっと怖い人が来るかと思ってたの。

え、なんで?

ノリ ほら、ロックンロールをやりたいとかいうとさ、コワモテで全身にタトゥー入ってます、みたいな人が来てもおかしくはないじゃない?

あぁ、そうかそうか(笑)。

シゲ 俺も同じこと思ってて、すごく気合い入れて行ったんだよね、なめられないようにって(笑)。
エースケ こっちも、唯一ガタイのいいマルが遅れてくるっていうから、ノリさんと「どうしよ、俺ら2人じゃヤバいよね?」って(笑)。

ビビりながらいざ出会ってみたら、意気投合したという(笑)。

ノリ 僕はそれまでずっとバンドをやりたかったんだけど、なかなかメンバーが見つからなくて、その頃はもう3年くらい固定のバンドがなくて。それが、こんなにすんなり見つかるもんなの?って驚いた。しかも、「ワン、ツー、スリー、フォー!」がすべてだとか言うし(笑)。
シゲ ははは(笑)。
ノリ でも、あのカウントの話は、一緒にバンドをやるうえですごく大事だったと思うよ。ちょっと感動したもん。

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「昔はライブでドンチャン騒ぎするのが単純に楽しかったけど、
今は、何がカッコいいのかをストイックに探求していくほうが楽しい」
シゲキング

バンドを続けていくために必要なものって何だと思う?

ノリ 続けるには、バンドが楽しいっていうことがいちばん大事だと思う。
シゲ うん。こないだもリハのとき、どんどん気持ちよくなっていく感じがあって。いろんなことに気付いていくから。

どんなことに気付くの?

シゲ ご飯でたとえると、卵に醤油かけるとうまいじゃん、みたいな。
ノリ こっちの卵のほうがおいしいじゃん、とかね。

なるほど。そういうことに気付くスピードも、最近はどんどん加速していってるんじゃない?

シゲ そうだね。前はライブも友達を集めてドンチャン騒ぎって感じだったけど、そういう状況だと逆に気付かないこともあるんだよね。今は3人でスタジオに入って、どうしたらいいライブができるかっていうシンプルなことを追求してるからさ、だんだんストイックになっていく。
ノリ たとえばCDも、友達が聴いてくれるのは嬉しいことではあるけど、「友達だから買う」っていうのはさ、ハッキリ言って中身の良し悪しは関係ないじゃない? うちらは友達だけに聴いてもらいたいわけではなくて、たくさんの人に聴いてもらいたいっていうのがあるから。
シゲ 友達は大事だけど、だからって同じ人たちでずっと固まってたら、モノの見方が狭くなっちゃう。でも、外の世界に出ていくと、「あいつは卵を凍らせるらしいぞ。俺らも試してみようか?」とか、さらにおいしい食べ方がわかったりする。
ノリ 「あいつの卵かけご飯、めっちゃうまいな」とか、あるよね。同じ卵かけご飯のはずなのに、それってご飯の炊き方なのか、何なのか。

探求したくなるよね。

ノリ その探求はちっとも苦ではないわけよ。おいしいものを食べたいっていう思いがあるから。

探求する楽しさね。吸収しようっていう意識も強くなった?

ノリ そうだね。ライブのときは対バンも絶対に観たいし、しかも、観ざるを得ないようなカッコいいバンドがいっぱいいるし。基本的にリスナーだから、カッコいいバンドを知りたいっていう気持ちは常にある。

現在はアルバムのリリースツアー中ということで、吸収するチャンスもますます多いんじゃない? エレキング初のツアーの感触はどう?

ノリ 12月5日の池袋Admでのレコ発を終えて、まずは12月12日に大阪・天王寺fireloopに行ったんだけど、初の遠征ってことでどんなもんなのかまったく未知数で、でも、行ってみたら本当に楽しくて。

しかもこの日の大阪は、実は諸事情で中止になるかもしれなかったんだよね。

ノリ そう。でも、東京で対バンしたことのあるバンドマンがfireloopのスタッフをやってて僕らを呼んでくれて、最後まであきらめずにこの日のブッキングを組んでくれてさ、もう、そんな熱い気持ちに応えないわけにいかないじゃない? で、僕らがどうしたら応えられるかって、それはライブしかないから。だから、ライブに関してはどこでやっても変わらないんだよね。
シゲ そう、俺らはどこに行ってもやることは一緒。
ノリ それはちっともネガティブな意味じゃなくて、東京だとか大阪だとか、ライブハウスが大きいとか小さいとか、そんなことは一切関係ないなって。もちろん、そんなことはツアーに行く前から漠然とわかってはいたんだけど、やっぱりそうだなって実感した。ロックンロールバンドがやることは、ロックンロールのライブしかないからね。

新しい出会いもいろいろあった?

ノリ ほんとにたくさんあって、それはライブハウスでもそうだし、僕がライブをしに行くのと同じくらい楽しみにしている、その土地のレコード屋さんでもそう。大阪のタイムボムは昔はちょくちょく行ってたんだけど、今回何年振りかで行ったら、ずーっと探してたレコードが見つかって。シゲさんも探したのが見つかったんだよね。
シゲ うん。「これはもう買うしかない!」って2人で大はしゃぎ(笑)。
ノリ で、僕らにとってタイムボムは特別な場所というか、大好きなレコード屋さんだから、フライヤーを置いてもらおうと思ったら、まさかCDまで取り扱ってもらえることになって。

おお、それは感無量だね!

ノリ そんな感じの嬉しいハプニングはいっぱいあって、名古屋で出たTiny7では、PAの人がシゲさんが個人練習で使ってる西荻窪のスタジオで以前働いてたことが判明したり、浜松では対バンのバンドマンがうちの近所の国分寺超山田堂のTシャツを着てて盛り上がったり。あとは、前に僕がネットでTシャツを探してたときに観てたサイトの店舗が浜松にあったからお店に行ってみたんだけど、実は浜松の対バンのバンドマンとお店のスタッフが仲良しで、僕らが浜松に来ることを事前に知ってたらしくて、お店のレジで「もしかして、エレキング?」って聞かれてビックリしたり。

なんか、行く先々でめちゃめちゃ楽しそう(笑)。

ノリ 食べ物もその土地によって全然違うから面白いよ。こんな時代だからさ、東京にいれば何でも揃うって思いがちだけど、そんなのマボロシだよ、ほんと。行かなきゃわからないことが絶対にある。それはきっとYouTubeでライブ動画を観て、そのバンドのことを知った気になってるのと似てるんだと思う。観たような気になるのと実際に観るのは絶対に違うからね。だから僕らはたくさんライブもやるし、ツアーにも行く。それはこれからもたぶん変わらないんじゃないかな。東京でも地方でもどこでもいろんな場所に出かけていって、エレキングの音楽を必要としてくれる人にひとりでも出会えたら、それは本当に嬉しいことだと思う。

(取材・文・撮影/志村香織)

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